三度目の殺人
原案・監督・脚本・編集 是枝裕和
撮影監督 瀧本幹也
照明 藤井稔恭
出演 福山雅治、役所広司、広瀬すず
©2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ
殺人の前科がある三隅が自分を解雇した工場の社長を殺害した容疑で起訴され、犯行も自供し死刑はほぼ確実なはずだった。弁護を担当する重盛は裁判で勝つために戦略をたて、なんとか無期懲役に持ち込もうと考える。弁護をするうちに三隅の供述はもとより動機にも翻弄されていく重盛。弁護には必ずしも必要ないと考えていた真実を、知りたいと願う重盛の変化。裁きとは何か、誰が誰を裁くのか。
「三度目の殺人」では是枝作品として初となるシネスコでの撮影を提案した。主人公ら三人の弁護士を画の中に上手く配置できれば、シネスコはスタンダードより立体的に撮影でき、なおかつアナモフィックレンズ特有の背景のぼけが人物を浮かび上がらせることができる。フレーミングは難しくなるが、画面の比率、ルックやトーンを考えてもシネスコの方が有効だと思ったからだ。フィルムノワールを思わせる彩度の低い画面の中で、返り血や焼けた夕陽といった赤が印象として少し残るように。そんな是枝さんの当初の考えに基づき、デジタル機材で撮影して、データからフィルムに焼く段階で銀残し的にする技法を用いることにした。デジタルでの撮影も是枝作品としては初の試みだった。 劇中に七度ある接見室のシーンは、光と感情のバリエーションをいくつも考え、何度目にはどの選択肢が適しているかという、パズルのような作業をくり返して撮影された。美術の種田陽平さんが接見室の上部や側面に窓をつくってくれたおかげで、窓からの光を照明の藤井稔恭さんが巧みにコントロールし、ガラスの映りを利用した立体的な画を撮ることができた。上手くいったと思うのは、弁護士の重盛(福山雅治)と容疑者の三隅(役所広司)の顔がガラス越しに重なるところ。ガラスに映る鏡像と正像を重ね合わせるため、実際の目線や座る高さを微妙にずらしてもらうことになり、芝居は不自由だったかもしれない。「三度目の殺人」では全般的に光と立ち位置の計算を緻密におこなったが、接見室のシーンは特にそうだった。雪の場面ではトイカメラ用レンズを用い、周辺がぼやけて見える特性を生かして、画のトーンをそれほど変えずに夢や回想のシーンを撮影している。アナモフィックレンズと同様に今回初めて使ってみたものだったが、リスクを恐れず、その都度新しいことにチャレンジするのはやはり楽しい。ー 瀧本幹也
第 74 回 ヴェネツィア国際映画祭 コンペティション部門正式出品作品
第 41 回 日本アカデミー賞 最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀編集賞、最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞、優秀音楽賞、優秀撮影賞、優秀照明賞、優秀録音賞
http://gaga.ne.jp/sandome/
The Third Murder / Sandome no Satsujin
Drafting, Director, Scenario, Direction Hirokazu Kore-eda
Director of Photography Mikiya Takimoto
Lighting Norikiyo Fujii
Cast Masaharu Fukuyama, Koji Yakusho, Suzu Hirose
©2017 FUJI TELEVISION NETWORK INC. / AMUSE INC. / GAGA CORPORATION
Misumi has a criminal record for murder and is now being charged for the murder of the boss at the plant where he was laid off. He confessed to the crime and the death sentence should have been a sure thing. Then, lawyer Shigemori takes his case and creates a strategy to win for him, thinking of somehow getting him life imprisonment instead. While defending him, Shigemori is stumbled by not only Misumi's statement, but also his motive. A change is seen in Shigemori who used to think that facts were not always essential in defense, but now wants to know the truth. What is justice, and who is judging who?
In Competition at the 74th Venice International Film Festival.
41th JAPAN ACADEMY PRIZE, Grand Prize
http://www.imdb.com/title/tt6410564/?ref_=nv_sr_1